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飛騨高山本陣平野屋 ブログ「飛騨高山から」

 平成8年秋 ―

飛騨ならではの味覚  お祭り  寿司・・・それは我が人生  女将より(秋は・・・)

飛騨ならではの味覚

 9月になれば、高山にはもう秋風が吹き、朝は日毎に冷え込む様になります。ついこの間「暑い、暑い」と言っていたのに「なんか寒いで、こたつ出したんやさ」(なんとなく寒いからこたつを出した)と言う声が聞こえ、毎年のことながら飛騨の秋は駆け足ですぎていきます。そして、そんな短い秋だからこそ飛騨の秋は盛りだくさんで魅力いっぱいなのです。

< 飛騨ならではの味覚>
◆なつめ◆
全国各地になつめの木はあれど食卓にのるところは飛騨地方くらいでしょうか。なつめの実は、生のままでかじるとりんごの様な味がして、ぼりぼりかじるのも美味しいのですが、やっぱり「なつめの煮たやつ」(なつめの甘露煮)が美味しいです。なつめの煮方は、それぞれの家によって違いますが、だいたいこんな風です。
〜なつめのかんろ煮〜
@まず、なつめのホゾ(木と実をつなぐ茎のようなもの)をようじでとる。
A大ぶりの鍋になつめを入れ、たっぷりの水で煮る。グラグラ煮ると実が割れてしまう ので気をつけます。
Bあくを取りながら、種と実が離れ柔らかくなるまで煮る。
Cなつめがぷくぷにふくれたら砂糖を入れる。砂糖の分量は、鍋の中にドボドボドボ……という感じで入れ弱火にして煮る。
D味がしみ込み、煮汁がとろーんとするまでコトコト煮て(電気コンロで煮ると良い)なつめの照りがよくなったら、仕上げに醤油を入れてできあがりです。
E炊いたその日より、翌日またその翌日が美味しくて、ごはんのおかずにはならないけど食卓にはなくてはならない秋の味覚です。

◆栗よせ◆
 栗よせとは、栗ようかんのようなものですが、もっとこってり、ざっくりした素朴な味 です。こしあんの中に丸ごとの栗がゴロンゴロンとはいっていて長い一本や切り売りになっています。町を歩けば、和菓子やさんの、店先に大きな立て札が出ていてすぐにわかります。私は栗よせが大好きで、子供の頃は栗よせの栗を後から食べようととっておいて、「行儀が悪い」と母に叱られたものです……今では自分の子供が同じことをして、私に叱られています。……気持ちはわかる!!


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お祭り

 秋になると、飛騨のあちこちで鎮守祭りが始まります。それぞれの地区で豊作を祝ったのが始まりでしょう。有名な高山祭りは、春は4月14、15、秋は10月9日、10日と年に2回有りますが、それぞれの氏神さまも区域も違います。秋まつりは桜山八幡宮の氏子によって執り行なわれ、宮本と呼ばれる祭りの総責任者が各屋台へ出します書状で2日間の段取りが流れていきます。お天気が良ければ、両日朝9時頃には屋台蔵から屋台が引き出され、所定の位置に出ます。最高潮の夜祭は、9日の夜7時から順路通りに曳かれます。高山祭りは女性的な祭りといわれ、それぞれにちょうちんをつけ、ユラユラと揺れながら屋台が通り過ぎるのを見ていると、心が洗われるように胸がジーンとするのは、私だけではないと思います。

◆屋台◆
 高山では、山車のことを屋台と呼びます。23台のうち、春祭りに12台、秋祭りに11台曳きだされます。屋台は、屋台組といってその昔、屋台を作る時に出資した人々のものです。個人の所有でもなく、町内の所有でもない不思議な存在です。「祭りやわい」(祭りの準備)がされ、祭りの日が近づくと屋台組の子供達はそわそわします。祭り当日、屋台に乗っていいのは組の子供だけと決まっているからです。曳きだし、夜祭、祭りの間中、屋台に乗って屋台に愛着を持ち、子供達は将来の屋台組の担い手になっていくのです。

◆かんかこかん◆

 祭りの巡幸の中の闘鶏楽のことを「かんかこかん」といいます。大人から子供まで3、40人の「かんかこ」が闘鶏楽の字そのものに、あざやかな衣装を身につけ頭に羽根をつけ、鐘を打ち鳴らし歩く……華やかで少し哀しげなかんかこかんは、祭りになくてはならぬ音です。かんかこかんの音が聞こえると、「行列きたよ!」といって家を飛びだし、行列の中の神様にお祈りをいたします。

◆祭りの呼びひき◆
 祭りの区域の人の家では、お客さんをよんで持て成す習慣がありますので、「祭りに呼ばれる」(およばれ)と、高山では酒一升を手みやげに持ってでかけます。祭りの家では、「まつりのごっつお」(ごちそう)を準備します。干しわらびの煮たものや、こもどうふの煮たもの、まんじゅうの天ぷら、つけ揚げ(衣に醤油の味をつけ、材料を揚げたもの)等など、土地ならではの手料理がならんで、お客様をもてなし、呑ませます。お客さんの中には、あちらの家、こちらの家と、はしごをする強者もいて、祭りの夜はにぎやかに更けていきます。
 「祭りが来るでこーわいさぁ」と飛騨の主婦が言うのは、祭りのご馳走の準備が大変だぁという意味で、この時期スーパーでよく聞く言葉です。

◆おまけ◆
  私が子供の頃は、祭りの行事に女はさわらないものでした。屋台も男の子だけが乗りましたが、今では屋台はもちろん、神楽のおはやしやかんかこかんにも女の子の姿があります。只、屋台の「からくり」を操るのだけは世襲制ですので、今でも屋台組の中の長男にだけ引き継がれています。
 伝統を受け継ぎ、次代へ引き継ぐ……
 高山祭りが、いつの時代にも愛しきものでありますように……

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寿司・・・・・それは我が人生  

すし兆 店長  森本 正洋     

 すしは新鮮が命……(山の中の高山の寿司)なんて、と思われるお客様があるかも知れません。でも、それは昔々富山から一日以上かけて、塩を一杯にふった魚を運んだ時代のことです。
 今、高山から富山まで88キロ、時代にして1時間30分。毎日新鮮な日本海の魚が 入ってきます。
 そればかりでなく、高山には寒い冬の風物詩〈蒸し寿司〉・節分祭の縁起物〈福巻き寿司〉・当すし兆自慢〈飛騨牛、焼き天然椎茸、お漬物のにぎり寿司〉等々高山ならではの寿司も沢山ございます。何処にあっても、美味しいものは美味しいもの。
 すし兆の寿司こそ、高山の隠れた名物ではないかと思っております。
 寿司の命が新鮮なネタにあるとは言うまでもありません。しかし、ネタさえ新鮮ならば、それで全てというわけにも参りません。良いネタをどう生かすか、いかに清潔さを保つか、お客様と対面し一言二言お話を交わす中で、お好みや気分を感じ取り、いかにベストの満足を味わっていただけるか努力する。それが私の仕事と思っています。
 私ども、すし兆には場所柄か、観光客の方、地元の方、お泊まりの方などいろいろなお客様がおいでになります。

  1. べつに寿司屋に来なくても、と思うくらいよく飲まれる方
  2. 食いだめをしているのではと、思うくらいよく食べる方
  3. 何をしに来たか、と思うくらい良くしゃべる人
  4. いちいち講釈をつけなければ納得しない人

 けれども殊に目立つものは、女性客が圧倒的に増えてきたことです。お客様全体の70〜80%位に達しているのではないかと思います。昔は寿司屋へ入ってくる女性は、男性客のうしろに隠れて、そっと入っていらっしゃいました。今は先に女性客が男性客を連れて入ってくるという感じが増えているように思います。
 私にとって女性客は嬉しいお客様でもあり、苦手なお客様でもあります。嬉しいのは男性のお客様よりも反応がはるかにはっきりしているからであります。「わぁ、美味しそう」「わぁ、しあわせ」そうしたお客様の言葉こそ私にとって何よりのご褒美であります。
 私は、高山の老舗の寿司屋に生まれ育ちました。私の我が儘から、30年働いた生家を離れ、転々としているとき、すし兆の話を頂きお引き受けすることになりました。
 陣屋、朝市、赤い中橋、古い町並など沢山の観光資源が集中する高山一の観光スポットの中に位置する和風旅館。日本交通公社からは95年度サービス優秀旅館に選ばれた旅館、本陣平野屋花兆庵。その中にすし兆はあります。そこには、京都から名を知られた板場さんが参加して居られます。また、私どもの別館にも、あるいは姉妹店でもあるフランス料理とステーキの店 和蘭陀舎(おらんだや)にも素晴らしい調理長が腕を振るっています。
 私も負けるものかと思っています。
 私は時々頭に剃刀を当て、すってんてんにします。だらけているなと思ったとき、緊張感の必要を感じたときであります。これからも時々すってんてんにし、頑張っていきたいと思います。
 寿司は
 私の生きている証であります。
 生きている限り、出来ればあと30年にぎり続けたいと思います。
 そして80歳になったときには、何十人前というような仕事では負けても、お好みのにぎりなら誰にも負けない、お酒の好きな方はお猪口の方に口が寄っていくと言われるように、私の前に座れば、お客様の口が寿司の方に寄っていく、そんな寿司屋になってみたいと思っています。

あとがき
 うちの社長はいつも難題を言います。
 先日も、「俺は池波正太郎さんの本に出てくる京都の寿司や(松寿司)へいってきた。そこの親父さんはこう言った。『京都で寿司やいうんはうち一軒だけですんや』、『他さんは寿司やいう看板出していやはっても料理やはんの成れの果てですんや』と。そして涼しい顔して、一個のにぎりを半分に切って出し、『こうしな舞妓さんは食べれしまへんやろ』俺は負けたような気がした。面白くない。そのうち何かの小説に出るようにしろ。」と。

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秋は・・・

 秋はお話したいことがたくさんあって小さな字になってしまいました。 ありがとうございました。

本陣平野屋 女将  有巣 栄里子     

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平成8年秋

飛騨高山の宿 本陣 平野屋 花兆庵 〒506-0011 岐阜県高山市本町1丁目34番 TEL.0577-34-1234
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