山菜をフランス料理に
ステーキハウス和蘭陀舎(本陣平野屋姉妹店) 店長シェフ 沢井良一
飛騨高山の味覚といえば、誰しもすぐ思い浮べるのが、山菜と飛騨牛です。私どもはその山菜と飛騨牛に取り組み、和蘭陀舎という名前で、フランス料理とステーキの店を営なんでいます。
私は、高山生まれの高山育ちです。私の子供の頃の最高の楽しみは、特別な時に洋食屋へ連れていってもらうことでした。幼い時に楽しんで食べた、とんかつ・カレーライスなど、とても美味しくて、今でも強く印象に残っています。
当時、レストランと言えるのは、高山では"アリス""スズメ"という2軒だけで、今日はこっちでこの次はあっち、と子供心に楽しいものでした。(レストランアリスは女将さんの生家で、私どもの姉妹点でもあります。)そういうことが、私の生い立ちに大きく影響したのか、いつのまにか母と一緒に買い物に行き、台所に立つようになり、高校卒業と共に、フランス料理の道へ入りました。見るもの、聞くもの、何が何だか分からず、飛び交う言葉もフランス語に英語と、まごまごしながら懸命に吸収していきました。ただその頃から生意気にも自分ならこうしたい、こんなふうにチャレンジしたいと思い続けていました。
調理の道に入って十数年経った頃、縁あって和蘭陀舎の店長シェフとして、運営と調理に責任を負うことになりました。この店は、飛騨地区に全くなかった雰囲気の店であり、私自信も張り切って仕事に取り組み、当初から相当の支持をいただいて参ったと自負しておりましたが、その中でもフランス料理の店ではあるが、大切なテーマとして取りくんでいきたいと思っていたのが、郷土の素材の活用でした。飛騨高山には、長い食文化の歴史があり、伝統的な京都との文化交流の中から宗和流などの独自の食文化も育ち、その中で息づいてきたのが、ふる里の素材山菜でした。そして私も何度も失敗を繰り返し、「蕗のとうの冷たいスープ」「山うどと鴨のオレンジ煮」「こごみのフリット・山わさびソース」などお客様に喜んでいただける物をいくつか創作いたしました。
長い飛騨の食文化の歴史と比べるなら、まだ先は長いですが、私の料理の中に飛騨の素材をどう活かし、どう組み立て、どうしたら喜んでいただけるか今後も追い続けたいと思っています。
ただ調理師としてはそれで良くても、店長としてはまだ合格はできません。「シェフだけでは不十分だ、店長なんだから」「素晴らしいレストランとはトータルサービス業だ、お迎えからお見送りまでのオール評価が点数だ」と言われ、私のおつむはだいぶん薄くなりました。(社長の責任です。)
私共の店はセミオープンキッチンで、お客様の前でステーキを焼くのは勿論、時には魚介類からご飯物まで料理をし盛り付けをします。ですから、料理を作るという気持ち以上におもてなしをするという心構えがいりますので常に緊張が解けません。泣いたり、笑ったり、胸を膨らませたり、落ち込んだりと、この店もいつのまにか十年経ちました。仕事に慣れ、それなりに自信も出来てきましたが、もう一度、開店時の緊張感を思いだし、料理の研究はもちろん、高山にお越しのお客様に素晴らしい思い出をお持ち帰りいただける店にしたいと思っています。ぜひ一度お越しくださいませ。 |